テニスでうまくボールが打てない子供の共通点とは?
テニスを始めたばかりの子供や、テニススクールに通ったばかりの子には、まずラケットの振り方から教えるスクールが多いと思います。
「1」で後ろ足を前に出して、「2」で前足を出しテイクバック、「3」でラケットを振るという教え方がスタンダードです。
ですが、このようなスイング練習をちゃんとやっているのにもかかわらず、なかなかテニスが上達しない、ラリーになると上手くボールを打てないというお子さんは沢山います。
今回は「イチ・ニ・サンでラケットを振るのは間違い!?」というテーマで、子供へのテニスの指導方法について考えてみたいと思います。
素振りはボールを打つための練習ではない!?
冒頭でご紹介した「イチ・ニ・サン」というラケットの振り方ですが、私はこれをボールを打つための練習ではないと考えていて、この練習はラケットの動かし方の練習であると思っています。
その理由は、私自身が野球の経験者なので野球で説明したいと思います。
野球では、実戦でピッチャーが投げるボールを「素振りと同じ形」で打てる場面はほとんど存在しません。
実際には遅いボール速いボール、外のボール内のボール、様々なボールに対応しながら振り方や体制を変化させますので、どちらかと言えば反応することのほうが大切となります。
とは言っても、野球は素振りも実戦も静止状態からの動作(その場での動作)となりますから、素振り自体は無意味ではありません。
しかしテニスの場合はどうでしょうか?
ラリーやラケット出しのボールは、緩急に加え、自分自身が前後左右に動きながらスイングをしなくてはならないので、スイング練習のように「イチ・ニ・サン」という一定のリズムでボールを打てる事はほとんどありません。
ということは、「イチ・ニ・サンで打つ」というスイング練習は、ボールを打つ為の練習ではなく、あくまでラケットの動かし方の練習となるのです。
つまり、スイング練習は動くボールを打つための練習ではないということを覚えておいてください。
しかし、テニスを始めたばかりの子供や、純粋な子供に「イチ・ニ・サン」の振り方を叩きこんでしまうと、実際にボールを打つ時も「イチ・ニ・サン」で打とうとしてしまうので、ボールが上手く打てないという落とし穴にはまってしまいます。
その理由をこの後にご説明します。
遠くのボールでもイチ・ニ・サン
「イチ・ニ・サン」の流れが染み付いてしまうと何が問題なのかと言うと、一番はボールとの距離が計れなくなるということです。
例えば手出しボールを打つ時、少し遠めにボールを出したとします。
運動神経が良い子供やラケット(道具)の使い方に長けた子供は、自然とボールへ適切な距離に近づいてから「イチ・ニ・サン」の動作をします。
こういった子供は順応性が高かったり、空間認識力が高く距離感を調節できる子です。
一方、教えられたことを守ろうとする純粋な子供は、遠くに出されたボールでも「イチ・ニ・サン」を守ろうとして必ず2歩で打たなくてはいけないと思いこんでいます。
そうなると、大股でボールに近づいて、ボールが遠くに合っても無理やり「サン」でラケットを振ってしまいます。
当然ながら、これではボールに力が伝わりませんし、正しい打ち方とは言えません。
ですがコーチたちに『ボールをよく見て「イチ・ニ・サン」で打つんだよ』と教えられてしまえば、それを守ろうとしてしまう子供もいます。
このスイング練習の問題は、いくら練習してもボールを打つことが上手くならないということで、指導者たちはいち早くこの点に気が付かなくてはいけません。
しっかりとボールを打つためにはボールとの距離感の取り方についても指導しないと、ボールを打つという動作に繋がらないのです。
もし子供のスイングがぎこちないとか、ボールに上手く合わせられていないとか、上手くボールを打てていないと感じたら、それは「イチ・ニ・サン」の流れが染み付いてしまっているのかもしれません。
ボールとの距離感を掴むための練習方法
ボールとの良い距離感を保つためには、ボールの軌道の予測と、それを調整する細かい足踏みが必要です。
ですが「イチ・ニ・サンの打ち方」が体に染みついてしまっていると、上手くこれができなくなります。
ですから一度「イチ・ニ・サン」というラケットの動かし方を教えたら、それ以上この練習をする必要はありません。
すぐに次のステップに進みましょう。
(子供に素振りの練習をさせるなら、横に動きながらの素振りをするようにしましょう。)
ラケットの動かし方の次に必要になるのは、ボールとの距離感をつかむために転がしたボールを打つ練習です。
転がったボールを打つには、突っ込みすぎてもボールは打てませんし、離れ過ぎていてもラケットが届きません。
この練習はバウンドするボールよりも難易度が低くいため、初めてテニスをする子供がボールの距離感を覚えるために最適な練習となります。
また「イチ・ニ・サン」の練習と違い、長い時間をかけて反復練習させ、ラケットの使い方や距離感を覚えることに意味があります。
転がるボールを正確に打てるようになったら、次は横にボールを投げて、ワンバウンドでボールをキャッチする練習を行ってみましょう。
この練習は4歳5歳用キッズテニス初期トレーニング2でもご紹介しています。
この動きが、ボールの予測と適切な位置へ動ごくための基礎練習となります。
これらの練習を踏まえてから、最後に手出しボールを打つ練習へと移行しましょう。
この時に「イチ・ニ・サンの動き」を意識させてはいけません。
あくまで最初はボールと体とラケットの距離感を大切にして練習してください。
そうすれば子供は勝手に「イチ・ニ・サン」の動きでボールを打ちます。
あきらかにラケットの動かし方が間違っている場合は、「イチ・ニ・サン」の練習でラケットの動きを治してあげても構いませんが、反復練習させることには意味がないと認識しておいてください。
地道な基礎練習や寡黙な個人練習に美徳を感じる日本人ですが、素振りの練習を沢山するよりも、テニスは実際にボールを打つ方が上手くなります。
これは至極当然のことで、テニスは動くボールを動きながら打つスポーツだからです。
このブログを読んでいる皆さんは「イチ・ニ・サン」という練習を反復させすぎないように注意してみてください。
次回はミートポイントと距離感を覚える練習方法をご紹介します。