子供の足を早くする練習方法
テニスに限らず陸上種目はもちろん、どんな球技でも足が早いというのは大きな武器になります。
テニスにおいてはトップスピードと言うよりも加速力の方が重要になりますが、足が遅いよりは足は早い方が良いに越したことはありません。
今回は子供の足を早くする練習方法について考えてみたいと思います。
足の速い子供、遅い子供の違い
意外にも足の速さというのは3歳・4歳あたりで差が出始めて、幼稚園や保育園の運動会などでは「足の速い子」や、そうでない子と違いがでてきます。
単純に月齢差がある場合は成長に差があるので比較はしにくいのですが、月齢がほぼ同じ子同士でも足の速さには違いがあります。
こちらを今ご覧の皆さんは、子供の運動会やかけっこを見て「子供の足を速くしたい」と考えている方も多いのではないでしょうか?
実際に私の子供も、幼稚園までは運動会のかけっこで3位(5人中)だったり、マラソン大会で11位(25人中)だったりと、決して足が早いとは言えず泣かず飛ばずの成績でした。
しかし年中・年長と地道に練習を続け、小学1年生になった頃には、クラスの女の子の中で1番足が早くなり、運動会の選抜リレー選手にまでなることができました。
これから皆さまにも、私の子供が実際に行った足を早くする為の練習方法や、走り方などについてご紹介していきますが、その前に『足が速い』とはなんなのか?どのような力が関係しているのかを考えてみることにしましょう。
足が早くなる走り方
足が早いとは、体の大きさや体格で決まるのでしょうか?筋力の違いでしょうか?遺伝で決まっているのでしょうか?
私が幼稚園で見ている限りは、体が小さい子でも足が速い子はいっぱいいますし、線の細い子であっても「走ってみたら意外と早い」と思う子も沢山います。
それではいったい足の速さとは何の違いから来ているのでしょうか?まずここから考えていきます。
子供の足が早いかどうかは、体格や遺伝ではなくて、1番影響するのは走り方です。
もう少し具体的に言うと、地面を強く蹴り、前への推進力が効率よく体に伝わっている走りをしているかどうかです。
これができていれば、背が低くてもピッチを上げていくことで速く走れますし、背が高い子は歩幅を大きくして速く走る事ができます。
ですから、子供のうちは走り方が上手になれば自然と足は早くなり、体格差や筋力差というのはほとんど関係がないのです。
しかし、難しいのは子供に良い走り方を「教える」ということ。
あまり理論詰めになってしまっても子供は理解することができません。
ただ、教える親や指導者が良い走り方とはなにかを理解していなければ、子供に教えることもできませんので、早く走る為の仕組みをこれからご説明していきます。
まずはわかりやすいところとして「悪い走り方」からご紹介することにします。
1.地面を後ろに蹴っている
運動神経は悪くない(球技などは得意)なのに足が遅い、という子に良くある走り方です。
この走り方は、足が大周りになってしまうことでピッチ(回転速度)が遅くなり、足の設置時間が長くなってしまう走り方です。
やけに土ぼこりが舞っていたり、足の裏が見えるほど蹴りあげている場合は走り方を間違えている典型的なパターンとなります。
2.上に弾んでいる
女の子に多く見られるのが、上へジャンプするような走り方。
膝を曲げてしまうので、力が地面に吸収されてしまい早く走る事ができません。
3.かかとから着地している
これも足の遅い子に多くみられる走り方です。
かかとから地面に着地することは、ブレーキをかけながら走っているのと同じことになります。
一方、良い走り方の例を上げてみましょう。
- 地面を下に強く蹴っている
- 膝を曲げずに反発を生みだしている
- やや土踏まず寄りのつま先で走っている
この中でも特に大切になるのは、1の地面からの反発を使えているかどうか。
でも、いきなり「反発」と聞いてもピンと来ない方も多いと思いますので、もう少し深く良い走り方について説明していきます。
日本では走り方を教わることが無い!?
陸上競技などをやっていた方を除けば、学校で走り方を習った方は少ないのではないでしょうか?
「腕を大きく振ろう」とか「足を高く上げよう」などと抽象的なことを言われたことはあっても、なぜ腕を振るのか、なぜ足を上げるのか、なぜそうするのか?と説明をしてもらった人はほとんどいないと思います。
あなたは自分の子供にも「大きく腕を振って!」「足を高く上げて」と指導していたりしませんか?
足を高く上げるとなぜ足が早くなるのか、その意味を子供に説明してあげることができるでしょうか?
これらの指導は決して間違ってる訳ではないのですが、途中の説明が抜けていることにより「なぜそうするのか」を理解できないため、教えてもらっても足は早くならないことがほとんどです。
なぜ足を高く上げるのか?その答えを知るために、まずは人間の体の仕組みを理解しておきましょう。
人間の体と言うのは、膝を曲げたり、腰をかがめたり、首が前後左右に動いたりして、様々な個所を曲げることができますよね。
これらは人間が体を動かす動作すべてに必要なことですが、それ以外にもジャンプしたり高いところから落ちた際に自分の体を守るため衝撃を吸収するという役割も持ち合わせています。
背骨が湾曲しているのもそうですね。
このように人間の体はクッション性の高い構造になっていて、強い衝撃を受けても力を分散できるようになっているのです。
しかし冒頭で、早く走るためには地面からの反発が必要だと述べました。
「吸収」と「反発」、まるで逆ですよね。
人間が早く走るためには、人間の持つクッション性は邪魔な存在となっているのです。
少し難しくなってきていますが、まずは「体の仕組み」と「速く走る」という動作は相反するものなんだ、ということを理解しておきましょう。
吸収と反発のしくみ
ではここからは反発の必要性を説明していきます。
走るという動作の中で速さに関係するのは、歩幅(ストライド)と回転数です。
速く走るためにはどちらか一方では駄目で、必ず両方が必要となります。
足を早く動かしても歩幅が短ければ前へ進みませんし、歩幅が大きくても足の動作が遅ければスピードは生まれません。
ただし回転数は若干個人差はあるものの、子供や大人、足が速い人遅い人を比較しても大きくは変わらないと言われています。
大切なのは回転数を維持したまま歩幅を伸ばすこと。
同じ10歩でも1歩が1mの人と1.5mの人では進む距離は長くなりますよね。
ではどうやって「歩幅」を上げることができるでしょうか?
人間の体は前への推進力が生まれている状態で足をあげると前へ進むことができるのですが、この足を上げるという動作=滞空時間を延ばすことができると「歩幅」は大きくなります。
しかし走りながら一回一回足を高く上げようとジャンプをしていたら、前への推進力は無くなってしまいますよね。(三段跳びのようなイメージ)
正しい走り方を理解していない子供に「足を高く上げて!」と指導しても足が早くならないのは、このような間違った指導で導いてしまっていることが原因です。
ここで必要となるのは、足を上げることやジャンプすることではなくて、地面からの反発を受けて滞空時間を延ばすこと、いわば自然に歩幅(ストライド)を伸ばすということになります。
・反発のもらい方
頭の中でイメージしてみてください。
歩くときに物音をたてないように歩くにはどうしますか?
多くの人は膝を曲げてゆっくりと歩く、忍者のような忍び足をイメージしたのではないでしょうか。
これは膝や足首で衝撃を吸収しながら歩く動作で、反発が生まれない歩き方となります。
ではトランポリンをイメージしてみてください。
トランポリンで高く飛ぼうと思った時、膝や体はどうなりますか?
そう、まっすぐに伸ばしてジャンプしますよね。
これは忍び足とは逆で、反発をもらう飛び方になります。
ここまで話すと、反発をもらうためにはどうすれば良いか分かってきた方も多いのではないでしょうか?
地面から反発をもらうためには、膝・背骨・首と体の衝撃を吸収する関節をロック(曲がらないように)して、力吸収をしないように心掛けることが大切。
イメージとしては、上記のようにトランポリンが沈んでいる状態をイメージして、足が地面に接地する瞬間に足を真っすぐに近い状態にします。
この着地時に、なるべく膝を曲げず、背筋を曲まげずに伸ばしておけば、自らジャンプをしなくても地面からの反発によって滞空時間が伸び、スピードを落とさずに歩幅を伸ばすことができるようになるのです。
つまり「足を高く上げる」というのは、『大きな反発力を生みだすため、地面を強く蹴れるように足を高く上げる』ということになります。
お分かりになりましたでしょうか?
長くなりましたが、これが「早く走る」という動作の最も基本的なこととなります。
しかし、子供にこれらの事を全て理解させるには年齢が若すぎます。
実際に「地面を強く蹴って!」という指導をしてしまったら、子供達は地面を踏みしめるように走ってしまうのが容易に想像できます(笑)。
では、どのような練習をすれば反発を理解してもらえるでしょうか?
反発を生むためのトレーニング方法
その答えは、上記でも何度か登場しているトランポリンで跳ねる練習です。
トランポリンを飛ぶことによって、足を真っすぐにしていると高くジャンプでき、膝を曲げてしまうと小さくなってしまう、という反発の感覚を自然に身につけさせることができます。
しかも、走るために必要な体幹や跳躍力、持久力までも鍛えることができる万能トレーニングですから、足が早くなる要素が全て詰まっていると言っても過言ではありません。
子供なら遊びの延長でピョンピョンしながら練習できると思いますので、足を早くさせたい方はぜひ取り入れてみてください。
もうひとつは台(段差)を利用した両足ジャンプのトレーニングです。
調度良い高さの台を用意し、両足で乗って両足で降りる、これを素早く行う練習をしましょう。
大切なのは「乗る」という動作ではなくて、「降りてから素早く乗る」という動作です。
地面に着地する際、膝を曲げずに「地面から跳ね返されるイメージ」をもって、反発で段差に戻ることが大切です。
上手く反発を受けて戻れた時と失敗した時の感覚がわかりやすい練習なので、良い感覚を脳に記憶させていき、良い走り方に変えていく基礎となります。
地面に着地した時に膝が曲がってしまうと、動作が遅くなり冒頭でも述べたような吸収が発生してしまいます。
これでは足に負荷をかける筋力トレーニングになってしまうので注意が必要です。
私の子供は、このトランポリンと両足ジャンプの練習を取り入れてから、自然と走り方が変わっていきました。
もちろん普段から「走る」という動作を練習することも大切ですが、子供のうちは正しい走り方へ導いていく方が、足が速くなるまでの時間は短いと思います。
子供の足を早くしたいとお考えの皆さん、ぜひ体の仕組みを理解したうえで、これらの練習を導入してみていただければと思います。
次は体を成長させる子供の食事や睡眠についてご紹介したいと思います。